印刷博物館ブログ – いんぱく通信

台湾の活版印刷②

2017年12月27日(水) by koubou

当館の活版印刷体験には台湾の方も多くいらっしゃいます。その中で教えていただいた、糖福印刷創意館を訪れました。

台北から新幹線と列車を乗り継いで3時間近く。最寄り駅は台南の新營駅です。周りにはトロッコ列車が走るのどかな所でした。昔はサトウキビや砂糖製品を運んでいたものが、今は観光用に使われているようです。

元々は製糖所に設立された印刷所だったとのことで、当時使われていた版や活字、鋳造機、印刷機などがそのまま展示されています。

サトウキビの繊維を使った紙漉き体験も。

帰り道では、台湾鉄道の追分駅にも寄り道をしました。

購入した追分→成功間の活版印刷の硬券は、縁起の良い駅名の切符として知られています!日星鋳字行の活字で印刷されています。

台湾の活版印刷①

2017年12月23日(土) by koubou

先日、台湾の活版印刷関連の施設をいろいろ訪れてきました。

まずは台湾で唯一活字鋳造を行っている台北の日星鋳字行。代表の張さん始めスタッフの皆さんには、当館にも度々いらしていただいています。

今年から新しく導入したという工作機械で母型を彫っていただきました。刃が高速回転しながら凹部を彫っていきます。

その場で活字も鋳造。鋳造機は日本製。

当館のシンボルマーク、ミルちゃんが完成です。

こちらはクリスマスカードの印刷と革を使った空押し体験。革を水で湿し活字をぎゅっと押すだけで、エンボス加工ができました。

台湾では、日本同様活版印刷が若者の間で人気です。今年8月にオープンしたばかりの地下書店街「誠品R79」では、活字や活版道具、簡易印刷機を販売、体験も行われています。

台北市内の地下鉄駅、中山と雙連を結ぶこの地下街は、本だけでなくカフェや雑貨、文房具も充実したおしゃれな場所でした。

周辺に暮らす人や仕事に焦点をあてた写真展も開催されており、日星鋳字行の張さんの姿も。

購入した台湾製の簡易活版印刷機。発想が斬新でとても面白いです。使ってみての感想は、またレポートしたいと思います!

島霞谷とその妻隆の話

2017年10月14日(土) by onsen

先日、島活字にゆかりのある群馬県桐生市を訪れました。

島活字は、明治3年につくられた和文の金属活字です。当館の総合展で展示されています(詳細はコレクション探訪をご覧ください)。

この活字をつくった島霞谷(しま かこく・1827~1870年)は、幕府の教育機関である開成所で学んだ洋学者です。幼い頃から画才に優れ、西洋の油彩画法や写真術を習得し、東京大学医学部の前身である大学東校では鉛活字を製作して医学書を印刷するなど、その万能ぶりから「和製ダヴィンチ」と呼ばれています。

当時、日本で猛威をふるったコレラなどの病気を防ぎ、人々を救うためには、医学の水準を上げ、医学教科書を出版することが急務でした。霞谷はその才能、知識、柔軟な発想力を活かして、明治3年、僅か半年ほどの間で活字を完成させました。

その妻、隆(りゅう)は、若い頃に一橋家の祐筆に採用された才女で、霞谷とともに写真術を身につけました。霞谷の死後は桐生で写真館を開業し、日本初の女性写真家となりました。

昭和63年に、幕末から明治にかけての油絵や写真作品、関係記録が発見され、島霞谷とそれを支えた隆の存在が明らかになりました。

桐生には、平成元年に建てられた島隆さんの記念碑があります。その隣には、大きなしだれ桜の木。いつか、ここに霞谷さんの記念碑も並んで建つと良いなと思いました。

National Print Museum

2017年10月08日(日) by koubou

先日、アイルランドの印刷博物館「National Print Museum」を訪れる機会がありました。
首都ダブリンの中心地からは少し離れていますが、川沿いを港方面にしばらく歩くと到着です。

建物は2階建て。1階には活版印刷をメインにたくさんの機械が展示されています。

罫引き印刷の機械や各種鋳植機。当館でも展示しているコロンビアン印刷機、アルビオン印刷機にアダナ印刷機。
その他にも、紙を加工する機械や製本の機械など、初めて目にするものが多数展示されていました。
タイミングが悪くデモンストレーションなしの期間ということで残念だったのですが、普段は見学ツアーに参加すると、実際に機械が動くところを見ることができます。
機械を動かすことができるのは70~80代の職人さんが主だそうで、代わりに映像を見せていただきました。

展示品の中でもとりわけ興味深かったのが、1916年4月の「共和国樹立宣言書」。当時はかなりの数が印刷されたそうですが現存するものは多くなく、そのうちの一枚が展示されていました。
画像と訳が以下のサイトに詳しく掲載されています。
https://www.dfa.ie/irish-embassy/japan/news-and-events/2016/the-1916-proclamation-in-japanese/

印刷物から読み取れることとして、
・活字の数が足りず、上下2回に分けて刷っていることがインキの濃淡からわかる。
・最も良く使われる「e」がやはり足りず、文章の中ほどには違う書体が混ざっている。
・見出し部分の「IRISH REPUBLIC」の「R」は、「P」を蠟で補い加工したもの。同じく「C」は、「O」を削ったもの?「TO THE ~」の「E」は、「F」を蠟で加工したもの。
などの解説文に、当時の状況を想像し思わず見入ってしまいました。また、この宣言書を印刷したものと同種の印刷機も合わせて展示されていました。

2階では企画展を開催、植物に囲まれたカフェも併設されており、こじんまりと落ち着く空間です。見学ツアーの他に、活版印刷や版画など事前予約制のワークショップも月に数回開催されています。日本からは少し遠いですが、アイルランドに行かれた際はぜひ訪れていただければと思います。

https://www.nationalprintmuseum.ie/

https://www.nationalprintmuseum.ie/intro/ ←映像も見ることができます。

夏の出張ワークショップ

2017年08月29日(火) by koubou

いつの間にか8月も終わりに近づき、印刷博物館の夏休みのイベントは先週で全て終了しました。

館内でのイベントに加え、出張ワークショップの依頼も多くいただき、

千葉、静岡、大阪、九州と、印刷工房スタッフが交代で出かけた夏でした。

 

8月22日(火)・23日(水)の2日間は、伊豆のホテルラフォーレ修善寺にて、

マイノートづくり+カラフルなハガキの活版印刷体験。

ホテルに滞在中のご家族での参加が多く、賑やかなワークショップとなりました!

当日の様子は、以下のサイトからもご覧いただけます。

http://plus.laforet.co.jp/blog/01szj/2017/08/post-854.html

 

また、帰り道では韮山反射炉を訪れました。

この夏一番の暑さ!

世界で唯一の現存する実用反射炉であり、世界文化遺産にも登録されています。

幕末に伊豆韮山の江川英龍・英敏らによって作られ、当時は大砲の鋳造を行っていました。

江川英龍は蘭書の研究も行い、西洋砲術を教える江川塾を開きます。

当時江川塾には日本中の藩から幕末の志士達が集まり、西洋の技術を学んでいました。

日本で初めて合金活字を作ったとされる大鳥圭介も

ここで教官として教えていたことがあり、

その後弾丸鋳造機を用いて活字を作ったとされています。

西洋から学んだ技術が互いに関連していることに驚き、不思議な縁を感じた出張でした。

花形装飾活字の世界

2017年06月30日(金) by onsen

先週末、印刷の家では、大人のための活版ワークショップ2017「花形装飾活字の世界」を開催しました。当日の様子は当館のツイッターフェイスブックで紹介しています。ここではもう少し詳しく花形装飾活字についてお話します。

花形装飾活字は、文字の活字と組み合わせて使うことができる装飾用の活字です。

15世紀末のイタリアで、鋳造された花形装飾活字が使われるようになりました。特に、印刷・出版が発展したのは海運都市ヴェネツィアです。東方、イスラム文化圏から、アラベスクと呼ばれるぶどうや花の蔓草模様が伝わり、書物の装飾にとりいれられました。また、当時はルネサンスの時代。古代ローマの装飾も見直され、花形装飾活字として復活しました。

植物の形をした活字は、生命、信仰、豊穣などの象徴として好まれました。印刷の家にも、ヴァイン・リーフと呼ばれる葉っぱの形をした活字があります。16世紀初めに流行し、様々な形にアレンジされて、近代でも鋳造されていました。

その後、花形装飾活字は16世紀フランスで大きく発展しました。活字の上下左右の向きを変えて、単独ではなく、組み合わせて使うユニット形式へと展開されます。

活字製作者のロベール・グランジョンがつくった活字をもとにした見本。グランジョンは様々な都市で父型(活字のもとになるもの)を売っていたので、彼の活字はヨーロッパ中に広まりました。

1557年以降、おそらくリヨンかベルギーのアントワープでデザインされたもの。右側は一つの活字ですが、左側は四つのユニットを組み合わせています。

まるで万華鏡のような組見本。

1570年頃から登場したリヨン風の活字。フランスのリヨンは花形活字の主要な生産地でした。

組み合わせによって、様々な表情が見られます。

それからルネサンスは衰退して、18世紀フランスでは、ロココ様式の華やかな装飾が流行しました。それを活字の世界で表現したのがピエール・シモン・フルニエという人です。活字は重ねたり詰めたりすることができないという制約がありますが、以下のような多彩なバリエーションを生み出しました。

フルニエの活字をもとにした組見本。とても豪華です。

外枠の貝殻模様は、このような細かい活字を並べています。印刷の家でもフルニエ風の活字を所蔵しています。

16世紀以来発展した花形装飾活字は、20世紀に入るとモノタイプなどの自動鋳植機によって、機械で生産されるようになります。その時に、再び古典の活字が見直されました。1920年代、当時の最新技術によって、古典の活字を復刻するという活動が起こりました。また、デジタルに移行した現代でも、花形が含まれているデジタルフォントがあります。

様々な文化の影響を受けて少しずつ形を変えながら、花形装飾活字は文字とともに長く使われてきました。今回のワークショップをきっかけに、少しでも皆さんに興味を持っていただけると嬉しいです。


5/14(日)フォントかるた大会@印刷博物館が開催されました。

どんな感じだったかは下記のツイートをまとめたものをご覧ください。
https://twitter.com/i/moments/863662638323990529

さて今回は4箱の「フォントかるた」を使いました。
複数の「フォントかるた」を使ったときに困ることのトップが、別の組にはいるべきカードが他の組に混ざってしまうことでしょう。
なにせ、書いてあるのは同じ文章のみですから、取り札を見ていっても混じっているのがどれなのか、なかなかわかりません。

おそらく、同梱されている書体一覧に付け合せて48枚並べるしかないでしょう。

その手間をふせぐのがこの一工夫です。
使う前に、一組48枚を重ねたままカード側面に線をひいてしまいましょう。
そして、別の組はちがう位置に線をひくようにしていきます。
今回は、さらにわかりやすいように色も替えてみました。

こうすると、もしカードが別の組に紛れ込んでしまった場合、
違う組であることを自己主張してくれます。

ピンク、赤、黄色(ちょっと見えにくい…)が混ざってる

同様の工夫が実は製本工程でも行われています。
本や雑誌はページ一枚一枚を重ねていくのではなく、大きな紙に数ページずつ印刷され折りたたまれた一組・ページの束を重ねていきます。
(このあたりのことは夏休み体験教室:製本体験「マイノートをつくろう」で実際に体験していただけます♪)

「マイノートをつくろう」って何をするの?1

「マイノートをつくろう」って何をするの?2

「マイノートをつくろう」って何をするの?3

 

この束の重ねる順番を間違えたり、入れ忘れると乱丁・落丁といった製本事故になります。
この事故をふせぐために、折りたたまれたページの背にマークがついていて、順番どおりきちんと重なっていればこのマークもきれいに並ぶはずなので、もし間違いがあった場合一目で気付くようになっています。

このマークを背丁や背標といいます。
なかなか目にする機会はないかもしれませんが、皆さんにみていただくことができるよい見本が印刷博物館にあります。

2011年開催「空海からのおくりもの」展の図録です。
この書籍をみていただくと、いわゆる背表紙がないので背丁・背標を見ることができます。

こんなふうに黒いブロックが階段状に並んでいるのが見て取れます。

ちなみに「空海からのおくりもの」図録は、この個性的な製本デザインを評価され、
・第46回造本装幀コンクール「出版文化国際交流会賞」
・2012年経済産業大臣賞
を受賞しています。

「美女と野獣」実写版、目に留まったのは

2017年04月25日(火) by Q太郎

ミュージカル好きとしては、今季必見・必聴の映画、早速 吹替版を観てまいりました。

CG含め、映像がすばらしいとか、吹替版のメンバーがミュージカル界的に超豪華!だとか、アニメにはなかった生い立ちの話とか、感激は一言では言い表せないのですが

印刷博物館スタッフとしておっと思ったのは、野獣がベルに見せてくれた秘密の本。

鋲付きの本でしたね。古い本の装幀ってかっこいい!とうっとりしてしまいます。

 

今のように気軽に手にすることができなかった時代、書物は財産でした。

そして今と違い、中身の本文だけで売られていて買い求めた人が自分の好みの装幀をしていたそうです。

お金持ちは豪華で贅沢な装飾たっぷりに、そうでない人は簡素な装幀、ときには本文そのままの場合もありました。

また、こうした図書が別の人の手に渡ったときに、再製本されることも往々にしてあります。何度も売り買いされ製本しなおされるときにページの余白をカットしていくので、本はだんだん小さくなってしまいます。そんなところからもこれらの本がしてきた旅に思いを馳せることができそうです。

盗まれないように、鎖で留められている書物もありました。こうした大きくて重い本は本棚に縦に並べられるのではなく、書見台に置かれていました。鋲付き本の鋲には、このような本のページが開いてしまうのを押さえる役目がありました。

印刷博物館ではこんな古い本も展示しています。

左上に鋲付き、その横に鎖付きの本

 

 

さて館内に展示している珍しい本には世界で一番小さい本・マイクロブックもあります。

なんと0.75ミリ角、ゴマ粒より小さいけれどちゃんと印刷・製本された本です。

展示室内で製造工程を紹介していますが、映像はYou Tubeでもご覧いただけます。

https://youtu.be/rDpkfNSN0xs

ご来館の際にはぜひ実物を見てみてくださいね。ルーペを使えば読めますよ。

HelveticaとUnivers

2017年04月07日(金) by onsen

今回は、印刷の家が所蔵する欧文活字の中から、20世紀を代表するサンセリフ体、HelveticaとUniversをご紹介します。

まずはHelveticaについて。印刷の家では、ドイツのStempelという活字鋳造所がつくったHelveticaを所蔵しています。もともとは今から60年前、1957年にスイスのHaasという小さな活字鋳造所で生まれました。その時の名前はHelvetica ではなく、Neue Haas Grotesque。直訳すると、「新しいハース社のサンセリフ体」という意味です。その後、StempelがHaasとライセンス契約を結び、スイスの古称であるHelvetiaから名前をとって、Helveticaとして発売し、大ヒットとなりました。

続いて、Adrian Frutigerがデザインした名作、Universについて。同じ時の1957年、フランスのDeberny & Peignotという活字鋳造所から発売されました。こちらも大ヒットして、その後、様々な鋳造所から発売されました。印刷の家では、イギリスのMouldという鋳造所のUniversを所蔵しています。

どちらもウェイト(太さ)のバリエーションが多く、見出しから本文まで、統一性をもって使うことができます。

Mediumのウェイトで較べてみると、Helveticaの方が太いです。字の形にも違いがあり、特に「G」「Q」「y」「1」は見分けるポイントになります。

ちなみに、印刷の家「知るコース」でお客様に印刷していただく栞には、Universが使われています。ぜひ確認してみてくださいね。


仕事とは関係なく、ただのミュージカル好きとしていったいどんなミュージカルなのだろうと期待しながら行って参りました。

グーテンバーグ!​ ザ・ミュージカル!(https://www.gutenberg-jp.com/)
2017年3月17日(金)~20日(月・祝) 於:新大久保・R’sアートコート

タイトルのグーテンバーグとはグーテンベルクの英語読み。
グーテンベルクの一生を描いた作品…ではないのです。
無名の脚本家ダグと作曲家バドが作った大型ミュージカルが「グーテンベルクが活版印刷機を発明する物語」。

その作品を夢のブロードウェイで上演するためにオーディションに臨む劇中劇として演じられます。

(公演終了したので、ラストに関わる内容を追記しています。)
Read more »

カレンダー

2018年7月
« 12月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

カテゴリ一覧

月別アーカイブ

Copyright 2017 © Printing Museum, Tokyo. All rights reserved.