館長メッセージ

2006年10月10日

スタンホーププレス―機械と人間と社会

幻の名機といわれたスタンホーププレスが、わたしたちの博物館にやってきます。日本で4台目にあたります。これを機会に、それの素晴らしさを探ってみたいと考えました。史上はじめての総鉄製の印刷機、それによって印刷文化の歴史は一変したといわれてきましたから。イギリス産業革命のまっただなかで開発されただけに、そこには人類の英知が隠されているにちがいありません。

しかし、スタンホープ機は、たんに技術史上の意義をもつだけではないことも、判明しました。チャールズ・スタンホープ伯爵は、この発明に人生を賭けていました。それは、印刷機の改良によって新聞や出版の自由を伸長できると信じていたからでした。フランス革命を熱烈に支持するほどの自由主義者は、産業技術に夢を託したのです。

機械と人間と社会。この永遠の主題をかかげて、わたしたちは今回の展覧会を企画・準備しました。多くの方がたにご覧いただき、ご批評をたまわりたいと念じています。

印刷博物館館長

樺山 紘一

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館長プロフィール

印刷博物館館長

樺山 紘一

1941年、東京生まれ。1965年、東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了後、1969年から京都大学人文科学研究所助手。1976年から東京大学文学部助教授、のち同教授。2001年から国立西洋美術館長。2005年から印刷博物館館長、現職。専門は、西洋中世史、西洋文化史。おもな著作に『異境の発見』、『地中海、人と町の肖像』、『ルネサンスと地中海』、『歴史のなかのからだ』、『西洋学事始』、『歴史の歴史』、『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』など。