館長メッセージ

2012年10月20日

企画展「印刷都市東京と近代日本」が始まりました。

わたしたちの博物館は、印刷の町のどまんなかにあります。大小の印刷会社・工場が、いまでもここ小石川とその周辺に立地しています。いえ、小石川に限りません。山の手から下町まで、東京は印刷万般のふるさとといっても構いません。印刷・製本など書籍・雑誌に関連する活動、それにお札、切手や証券ほかすべてをあわせてのことです。まことに、とびきりの印刷都市です。

じつは、こうした事情は、はるか遠い江戸時代に始まりました。浮世絵や読本の刊行・出版。そして幕末から明治初年の文明開化の時代には、官民・公私のあらゆる場で、新しい首都である東京は印刷でにぎわいます。その技術・文化や産業・経営が、近代日本の発展を力強く支えることになりました。

そのありさまは、同時代の世界各国とくらべても、珍しいほどといっても過言ではありません。あまりに身近なためにかえってそのことに気付かなかったこともありますが。いずれにしてもこの機会に、印刷首都の誕生と発展の姿を、あらためて確かめてみたいと考えました。

各方面から、さまざまな情報をいただき、貴重な資料も提供していただきました。はたして、印刷都市東京の仕組みや成り立ちを、よく説明できたでしょうか。どうかご感想やご助言をお聞かせください。

印刷博物館館長

樺山 紘一

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館長プロフィール

印刷博物館館長

樺山 紘一

1941年、東京生まれ。1965年、東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了後、1969年から京都大学人文科学研究所助手。1976年から東京大学文学部助教授、のち同教授。2001年から国立西洋美術館長。2005年から印刷博物館館長、現職。専門は、西洋中世史、西洋文化史。おもな著作に『異境の発見』、『地中海、人と町の肖像』、『ルネサンスと地中海』、『歴史のなかのからだ』、『西洋学事始』、『歴史の歴史』、『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』など。