館長メッセージ

2014年5月16日

「朝鮮金属活字文化の誕生」の展覧会へ

韓国の清州古印刷博物館と東京の印刷博物館が、友好姉妹関係を結んでから10年が経過しました。この間に、両館はそれぞれの活動に取り組み、誇るべき成果をあげてきました。そこでは、互いに相手方から学んだ知識情報と事業精神とが、重要な意味をもっていました。たしかに、両館は異なった環境のもとでも、印刷文化の歴史の理解と現在への貢献において、共通の方向を志向していたのですから。

韓国の金属活字印刷は、日本にとっては尊敬すべき先輩に当たります。韓国の清州では、14世紀という早い時代に「直指」と略称される、金属活字印刷本が刊行されました。また朝鮮王朝のもとでは、継続しておなじく活字印刷が行われました。のちに徳川家康によって開発された駿河版銅活字は、当館が所蔵する重要文化財ですが、その製作は疑いなく韓国からもたらされた技術を基礎にして可能となりました。その技術はいったんは放棄されましたが、日本文化の遺伝子となって引き継がれ、のちに近代世界における開花に結びつきました。

いま、博物館本展示室の一画で、「朝鮮金属活字文化の誕生展」が行われています。両館の連携の10周年を記念し、またこれからの発展を期しての展覧会でもあります。皆さま、どうかその姿をご覧いただきたく、ひいては日韓両国の友好関係の発展につながればと念じています。ご来館をお待ちします。

印刷博物館館長

樺山 紘一

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館長プロフィール

印刷博物館館長

樺山 紘一

1941年、東京生まれ。1965年、東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了後、1969年から京都大学人文科学研究所助手。1976年から東京大学文学部助教授、のち同教授。2001年から国立西洋美術館長。2005年から印刷博物館館長、現職。専門は、西洋中世史、西洋文化史。おもな著作に『異境の発見』、『地中海、人と町の肖像』、『ルネサンスと地中海』、『歴史のなかのからだ』、『西洋学事始』、『歴史の歴史』、『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』など。