館長メッセージ

2014年10月16日

2人のお雇い外国人

1875(明治8)年から翌年にかけて、日本近代の印刷文化史に巨大な足跡を残す、2人のイタリア人があいついで来日しました。ともに美術分野の出身でしたが、出発したばかりの明治新政府は、2人の「お雇い外国人」に大きな期待を寄せていたようです。エドヴァルド・キヨッソーネとアントニオ・フォンタネージ。

それぞれの得意技があったのでしょうが、2人は明治政府の要請にこたえて、美術としての印刷術、つまり版画制作にあってヨーロッパ伝統の技術を日本人に伝達しました。キヨッソーネは紙幣寮(大蔵省印刷局)において、おもに紙幣や切手など国家的事業にむけて指導をおこない、フォンタネージは工部美術学校で油彩画と石版画の手ほどきに専念します。明治の日本人は、驚くべき勤勉さで技と心を学びとり、日本の造形と印刷の水準を高めていきました。

わたしたちは、2人の足取りを追いながら、印刷と美術の新しい可能性をひらいた明治初年の姿を再現したいと考えました。2012年秋に開催した「印刷都市東京と近代日本」展に引きつづき、日本近代の夜明けを飾った印刷文化の輝きと苦闘を、追体験してみたいのです。展示をご覧いただき、感想をお寄せいただければ幸いです。

皆さまのお越しをお待ちしております。

印刷博物館館長

樺山 紘一

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館長プロフィール

印刷博物館館長

樺山 紘一

1941年、東京生まれ。1965年、東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了後、1969年から京都大学人文科学研究所助手。1976年から東京大学文学部助教授、のち同教授。2001年から国立西洋美術館長。2005年から印刷博物館館長、現職。専門は、西洋中世史、西洋文化史。おもな著作に『異境の発見』、『地中海、人と町の肖像』、『ルネサンスと地中海』、『歴史のなかのからだ』、『西洋学事始』、『歴史の歴史』、『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』など。