館長メッセージ

2016年10月20日

武士と印刷のふしぎな関係

徳川家康をはじめとする江戸時代の武士たちは、じつは多数の印刷物を出版しました。ところが一方で、武者絵とよばれる印刷物、つまり浮世絵が人気を集めました。なかでも歌川国芳が描いた武者の姿は、躍動感にあふれ、人々を魅了しました。武者絵に描かれた武士のイメージは、印刷物を作らせた武士たちとは異なります。武者絵に「摺(す)られた武士」と印刷物を「刷(す)らせた武士」との間には、驚くほどのギャップがありました。

本展覧会では、勇猛な「戦(いくさ)」が本分であると考えられた武士が、「知」による活動(=印刷)を行っていた事実を紹介します。徳川家康が目指し、続く武士たちが実現させた文治政治には、「印刷」が深く関わっていたのです。

武士をめぐる印刷活動の成果をぜひご覧下さい。展示替えをしながら2017年の1月15日まで開催しています。みなさまのお越しをお待ちしております。

印刷博物館館長

樺山 紘一

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館長プロフィール

印刷博物館館長

樺山 紘一

1941年、東京生まれ。1965年、東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了後、1969年から京都大学人文科学研究所助手。1976年から東京大学文学部助教授、のち同教授。2001年から国立西洋美術館長。2005年から印刷博物館館長、現職。専門は、西洋中世史、西洋文化史。おもな著作に『異境の発見』、『地中海、人と町の肖像』、『ルネサンスと地中海』、『歴史のなかのからだ』、『西洋学事始』、『歴史の歴史』、『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』など。