館長メッセージ

2018年3月22日

デジタル印刷の進化

「印刷」というコンセプトの変容が続いています。活字が消えたと思っていたら、ついに本丸と考えられてきた「版」を使わない印刷が登場しました。デジタル・データの出力のままで印刷できるということなのです。

この新技術の適用によって、ごく小部数の印刷も実行できるようになりました。デジタル印刷が、ついに手間とコストという2つの難問を克服できるようになって。こうして「注文ごとに」というオンデマンド出版は、「場面ごとに」ちがうバリアブル出版にまで到達しそうです。

デジタル手法は、たしかに印刷の文化を変えていくでしょう。従来の大部数印刷とならび、新しい小部数印刷を、ともに成立させることが可能です。それは確実に、印刷の地平をかなたに拡大することにつながるはずです。

それにしても、このデジタル手法の進化は、本当はどんな姿をとりつつあるのでしょうか。その「現在」を展望したいと願って、本展覧会を企画しました。ゆっくりとご覧いただき、ご感想などお寄せいただければ幸いです。

印刷博物館館長

樺山 紘一

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館長プロフィール

印刷博物館館長

樺山 紘一

1941年、東京生まれ。1965年、東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了後、1969年から京都大学人文科学研究所助手。1976年から東京大学文学部助教授、のち同教授。2001年から国立西洋美術館長。2005年から印刷博物館館長、現職。専門は、西洋中世史、西洋文化史。おもな著作に『異境の発見』、『地中海、人と町の肖像』、『ルネサンスと地中海』、『歴史のなかのからだ』、『西洋学事始』、『歴史の歴史』、『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』など。