コレクション

『小学唱歌集 初編』

収蔵品

1889年(明治22年)制作/サイズ:125×180×6mm(横×縦×厚み)

資料番号:56329

本書は、明治12年以降、文部省の唱歌編成計画のもと編纂された唱歌集です。明治5(1872)年「学制」の公布によって、小学校の教育に唱歌が組み込まれますが、実際の教育普及に至るまでにかなりの時間を要しました。それまで日本にあった音楽とは、教養というより口伝の芸能であり、西洋音楽のように学術的に教えられる教師はもちろん、楽譜もなかったのです。
明治12年に、文部省の中に設置された音楽取調掛の創立メンバーの伊澤修二らは、アメリカ留学を経ていました。留学中に知り合った音楽家L・W・メーソンが同年来日し、日本の音楽教育の下地作りが本格的に始まります。メーソンの指導により一部の学校で実験的に唱歌の授業が行われるようになり、楽器も輸入され、日本人音楽教員の育成も行われます。そのような任務に加え、最も望まれていたのが、唱歌集の編纂でした。
明治14年を初版とする『小学唱歌集 初編』は、三千部印刷され、翌年、さらに三千部が増刷されました。当館が所蔵する『小学唱歌』は、第四版になりますが、緒言(序言)には、メーソンのことと思われる一節、「遠ク米国有名ノ音楽教師ヲ聘シ百万討究論悉シ本邦固有ノ音律ニ基ヅキ彼長ヲ取リ我短ヲ補ヒ・・・」が記されています。