館長メッセージ

2007年1月16日

新年の展覧会のご案内です

印刷博物館から、新たな年のごあいさつです。1月20日から、企画展がはじまります。ちょっと長い名前でごめんなさい。「モード・オブ・ザ・ウォー 東京大学大学院情報学環所蔵 第一次世界大戦期プロパガンダ・ポスター コレクションより」。

英語のタイトルになったのは、そのポスターがアメリカ合衆国で作られたからです。いまから90年ほど前、第一次世界大戦がヨーロッパで勃発したころ、アメリカは遅れてこれに参加しました。海外ではじめての参戦。そのために、兵士の募集や資金の調達のために、大がかりなキャンペーンが必要となりました。ポスターは、たいへん有効な手段となりました。多数の市民の目にとまりやすかったから。そして、石版をはじめとして、優秀な印刷技術がここに投入されたからでもあります。

わたしたちは、このプロパガンダ・ポスターを所蔵する東京大学大学院情報学環と共同で、調査と研究をつづけてきました。ポスターが、戦争にどんなイメ-ジを託したのか。それは、当時のアメリカ社会にとって、どんな意味があったのか。そして、ポスターの制作にはどんなヴィジュアル技術が秘められているのか。

あらためて、ポスターのアッピール力に驚かされるような気がします。そして、ちょっと立ちどまって考えると、戦争に向きあう姿勢に反省と教訓をうながしているようにも、思えてくるのです。どうか、みなさんのご意見をおよせください。

印刷博物館館長

樺山 紘一

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館長プロフィール

印刷博物館館長

樺山 紘一

1941年、東京生まれ。1965年、東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了後、1969年から京都大学人文科学研究所助手。1976年から東京大学文学部助教授、のち同教授。2001年から国立西洋美術館長。2005年から印刷博物館館長、現職。専門は、西洋中世史、西洋文化史。おもな著作に『異境の発見』、『地中海、人と町の肖像』、『ルネサンスと地中海』、『歴史のなかのからだ』、『西洋学事始』、『歴史の歴史』、『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』など。