館長メッセージ

2008年9月20日

「雑誌の時代」をふりかえってみます

いま、本屋さんに入ると、まずは棚いっぱいに並べられた雑誌類の数に驚かされます。しばらく前から雑誌の全盛期といわれてきました。

ところが、この雑誌の盛況は、けっしてごく最近に始まったわけではないようです。明治維新をむかえる直前に、日本に最初の雑誌が刊行されてから140年。そのうちでも明治から大正時代のあいだに、雑誌は種類にあっても、刊行部数にあっても、たいへんな飛躍をしるしていました。

昭和2(1927)年には、雑誌『キング』がついに100万部を突破するほどでした。一口に100万といいますが、その時代にとっては、ほんとうにびっくりするほどの数字だったでしょう。

今回の展覧会は、雑誌の誕生からミリオンセラーの出現までの時代に、焦点をしぼりました。どれだけのバラエティーがあったのか。編集者や出版社は、どのような工夫をしたのか。読者たちはどんな雑誌に興味をしめしたのか。いろいろの角度から考えてみました。華やかな「雑誌の時代」のありさまを見直す展覧会に、どうかふるってお運びください。

印刷博物館館長

樺山 紘一

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館長プロフィール

印刷博物館館長

樺山 紘一

1941年、東京生まれ。1965年、東京大学文学部卒業、同大学院修士課程修了後、1969年から京都大学人文科学研究所助手。1976年から東京大学文学部助教授、のち同教授。2001年から国立西洋美術館長。2005年から印刷博物館館長、現職。専門は、西洋中世史、西洋文化史。おもな著作に『異境の発見』、『地中海、人と町の肖像』、『ルネサンスと地中海』、『歴史のなかのからだ』、『西洋学事始』、『歴史の歴史』、『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』など。