館長メッセージ

2023年11月21日

「明治のメディア王 小川一眞と写真製版」がはじまりました

19世紀前半にフランスで発明された写真は、幕末期に渡来し、明治以降の近代化の時代にあって、さまざまな物事を記録してきました。写真が社会に広まっていった明治後半期に活躍した写真師の一人が、小川一眞(1860~1929年)です。旧千円紙幣に使われた夏目漱石の肖像は、小川が撮影したものです。多くの方が小川の写真を一度は目にしているのではないでしょうか。
小川一眞は、他の写真師たちと異なり、写真撮影だけではなく、写真製版によってたくさんの印刷物を製作、出版しました。写真製版とは、写真技術を応用して、ネガとポジの原理を基に印刷の版をつくる方法です。日本では明治時代から始まり、印刷会社の製版現場で用いられ続けました。テレビもラジオもなかった明治時代のメディアといえば、新聞、雑誌、書籍などが中心であり、とりわけ写真の入った印刷物は大きな役割を果たしました。
本展覧会では、小川一眞が導入した2つの写真製版技術、コロタイプ印刷と網目版印刷で製作した印刷物を中心に、関連資料を紹介します。写真製版が印刷をどのように変えたのか、近代日本における視覚メディアの発展と視覚文化の形成に、いかに小川一眞が大きな影響を与えたのか、探っていきます。
末筆となりましたが、東京都江戸東京博物館をはじめ、各方面からさまざまな情報をいただき、貴重な資料も提供していただきました。本展の開催と図録の作成にあたって、ご助力・支援をたまわった多数の皆さまに、厚く御礼を申し上げます。

印刷博物館館長

金子 眞吾

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館長プロフィール

印刷博物館館長

金子 眞吾(かねこ しんご)

1950年生まれ。1973年4月凸版印刷株式会社入社。2010年6月代表取締役社長を経て、2019年6月より代表取締役会長。2021年10月から印刷博物館館長、現職。