印刷博物館ニュース
「当館所蔵コレクションでみる『書楼弔堂』」開催中
4月12日より始まりました京極館長就任記念展示「京極夏彦ミーツ印刷博物館」は、現在、第Ⅲ期を開催中です。
今回は、記念展示のラストを飾る「当館所蔵コレクションでみる『書楼弔堂』」について紹介します。
展示の開催趣旨
京極作品の一つである『書楼弔堂』シリーズは、明治20から40年代、古今東西の書物が揃うという書舗「書楼弔堂」を舞台に、実在する著名人が1冊の本と出会う物語です。本展では当館所蔵資料から、本シリーズに登場する人物が実際に関わった資料を紹介しています( ❶ )。彼らがどのような社会で、どのような仕事をしたのかを感じ取ってください。

『書楼弔堂』シリーズとは
物語の舞台となる古書店「書楼弔堂」では、弔堂主人が本を探しに訪れた人々の心の内や思いを鋭く洞察し、彼らにとって必要な1冊の本を手渡します。4巻からなるシリーズで24の探書の物語が描かれています。
第1巻『破曉(はぎょう)』明治20年代後半、第2巻『炎昼(えんちゅう)』明治30年代前半、第3巻『待宵(まつよい)』明治30年代後半、第4巻『霜夜(そうや)』明治40年代を舞台としています。時代ごとの書物と人との関わりを垣間見ることができるシリーズです( ❷ ❸ )。


本展で紹介する関連人物と資料
24の探書の物語の中から、当館が所蔵する資料に関わる9人の人物を選びました。肖像写真と人物紹介による関連年表と、それぞれの人物の関連資料を比較して見られるようにしています( ❹ )。その中から、4人の人物と関連資料を紹介します。

① 巌谷小波(いわやさざなみ)(第1巻『破曉』に登場)
『オハナシ』
巖谷小波が校閲を担当した、全5冊シリーズの童話です。多色刷り石版画による挿絵が多く掲載されており、杉浦非水が装幀を手掛けています。本書はシリーズ5冊目で、20話を掲載しています( ❺ )。

② 宮武外骨(第3巻『待宵』に登場)
『滑稽新聞』第173号 自殺号、『大阪滑稽新聞』第1号
『滑稽新聞』は、反骨のジャーナリストといわれた宮武外骨が発行した風刺雑誌です。発行
禁止処分を受けたため、第173号を「自殺号」と名付けて廃刊宣言しました。これは彼の洒落であり、翌月にはタイトルに「大阪」を加えたものを創刊しています。展示では双方あわせてご覧いただけます( ❻ )。

(資料No.20158)

(資料No.20185)
③ 夏目漱石(第4巻『霜夜』に登場)
『吾輩ハ猫デアル』下編
夏目漱石最初の長編小説です。1905(明治38)年から1907(明治40)年にかけて、上・中・下編が刊行され人気を博しました。橋口五葉が手掛けた装幀も見る者の目をひきつけます。現在まで読み継がれる名作の原点ともいえる資料をご覧ください( ❼ )。

(資料No.22133)
④ 牧野富太郎(第4巻『霜夜』に登場)
『大日本植物志』第1巻第3集
牧野富太郎が描いた植物図を石版で刷り、解説文を載せた植物図鑑です。「日本植物学の父」と呼ばれた牧野による緻密な植物図を、今日に伝えてくれています。展示している植物図はツツジ科のセイシカで、「幻の花」と呼ばれる希少品種です( ❽ )。

(資料No.78530)
本展示は、2026年3月1日まで地下プロローグ特設コーナーにて開催しています。常設展の入場料でご覧いただけます。
(印刷博物館 学芸員 緒方宏大)
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