コレクション

『露地のほそみち』

収蔵品

1926年(大正15年)制作/サイズ:132×199×20mm(横×縦×厚み)

資料番号:03791

大正8(1919)年に刊行された同名書籍のアト版。竹久夢二が編集した小唄本。夢二による巻頭言によると「江戸末期の健康でない蒼白いデカタンな空気のなかから一味純真な或は典雅なものを拾ひだしたい希望で編輯(へんしふ)した」という小唄に、夢二の描いた東京の風俗や風景のスケッチが添えられています。この本は箱、表紙、見返し、扉が木版で印刷されており、雰囲気のある美しい書物となっています。さらに11枚もの木版口絵が綴じこまれており、彩りを添えています。夢二の描く柔らかな線の女性像には味わいのある木版がよく合っています。
巻頭言には「震災で絶版になつてゐたのを複製したいといふので、手許にある古版(ふるはん)からいささか抜差(ぬきさし)して、これもやはり書肆(しょし)の希望で、もとの形で出すことになつた」とありますが、実際は「木版画の方は新しく書き添へることにした」とあり、口絵の木版画、また装丁もがらりと変わっています。大正8年版を持っていても夢二ファンなら欲しくなるような美しい本に仕上がっています。
またこの本のページのあちこちには、内容とはまったく関わりなく、夢二が自身の「紙片(かみきれ)コレクション」のなかから抜粋したお気に入りの店の仕切印(しきりばん)(商標のようなもの)が印刷されており、この時代のおおらかで自由な雰囲気が伝わってきます。