コレクション

「不動明王坐像印仏」

収蔵品

室町時代(南北朝時代)制作/サイズ:310×468mm(横×縦)

資料番号:20773

京都東寺にあった木造の不動明王の胎内に納められていた印仏です。印仏には、阿弥陀如来像や薬師如来像、地蔵菩薩像などさまざまな種類がありますが、この印仏には、横一列十体を一つの版として、十段分、計百体の不動明王坐像が印されています。
印仏は、仏像の姿を印として版木に彫って、はんこを押すように、繰り返し紙に印すものです。
その始まりは平安時代末期頃といわれ、仏法が衰え乱世となるという末法思想を背景に僧侶や貴族の間で行われるようになりました。この末法思想が広がる中、人々の間に善根をより多く積んだ者が仏の功徳を得られ、生き残れるといった考えが高まり、善を積む行為として仏像を作ることが盛んに行われるとともに、時間や労力がかかる造仏の代わりとして多数の仏像を紙に印すことで功徳を得ようと印仏が行われたのです。印仏は、仏の功徳を得たいといった人々の願いや祈りと、複製行為である印刷が結びついた姿といえるでしょう。
ここに紹介する不動明王坐像印仏は、真言密教の修行の場として長く栄えた京都東寺にあった不動明王坐像の胎内に納められていたもので、室町時代(南北朝時代)における密教系の印仏として知られています。