コレクション

ゼーバルト・ベーハム『キリストの寓意』

収蔵品

1548年制作/サイズ:48×77mm(横×縦)

資料番号:76376

ルネサンス期に情報流通の一翼を担ったのがエングレーヴィング(直刻銅版)でした。グーテンベルクによる活版印刷術同様、北方ヨーロッパが誕生の地だったのも興味深い点です。文字と図像、二つの複製術が出そろう15世紀こそ、本格的な印刷時代の幕あけといえるでしょう。
当時、ドイツではデューラーやクラーナハなど多くの芸術家が版画を手がけました。ニュルンベルク生まれのベーハムは、同郷のデューラーのもと修行したとされます。16世紀半ばにつくられた本資料は長辺でさえ76ミリしかありません。作品の多くがこうした小さな名刺サイズだったことから、ベーハムは「小型版画の名人」とよばれます。密に線をかさねるエングレーヴィングならではの微細表現です。
心臓がCHARITAS(慈愛)、十字架がFIDES(信仰)、大天使ミカエルはDIABOLUS(悪魔)を表す蛇を踏みつけています。このように絵と文字でキリスト教の諸概念が表現されています。左側に製作者のイニシャルHSB(Hans Sebald Beham)を確認できます。