コレクション

大般若波羅密多経 巻第二百七

展示中

鎌倉時代制作/サイズ:97×267×12mm(横×縦×厚み)

資料番号:21266

三蔵法師玄奘を開祖とする法相宗の大本山、かつ、藤原氏の氏寺である興福寺。ここでは、平安時代末期から江戸時代にかけて、仏僧の教学として数多くの印刷・出版事業が行われました。この中で、春日神社に奉納されたのは、春日版と呼ばれ、当時の印刷物を語る貴重な資料となっています。
『大般若波羅蜜多経』とは、もともと玄奘が全六百巻にまとめた経典のことですが、今回ご紹介する春日版『大般若波羅蜜多経巻第二百七』は、興福寺において出版活動が盛んになった鎌倉時代に復刻、印刷されたものです。当時、わが国で印刷された『大般若波羅密多経』には、巻子本と折本の形態のものがあり、この頃から既に中国に倣って製本が施されていたことが分かります。また、整然と並んだ文字や均一な厚さの料紙、墨などから印刷に必要な素材や一連の技術が整いつつあったことがうかがえます。
現在、総合展にて展示中の春日版『大般若波羅密多経巻第二百七』を通じて、わが国の初期印刷・出版事情をのぞいてみてください。