コレクション

『吽字義』

収蔵品

サイズ:160×249×7mm(横×縦×厚み)

資料番号:36948

弘法大師空海の著作。思想書であり、日本語の五十音成立の様子までうかがえる良書です。
阿吽の呼吸で知られる「阿」「吽」という文字。サンスクリット語の最初の音「a」と最後の音「n」に漢字をあてたものです。「阿」はすべてのはじまりを、「吽」は終息を意味します。終わりを意味する吽の一字には、森羅万象そのものである大日如来が表れているのだと、『吽字義』を通して空海は説きます。
諸寺院でみかける金剛力士像「阿形像」「吽形像」の理解も同様。左右に安置された仁王像の真ん中を通りながら、参詣者である私たちは前方(境内)に彼岸、後方に此岸、左右では宇宙のはじまりと終わりを体験しているのです。アではじまりンでおわる五十音。見慣れた文字の配列にも深遠な世界を感じることはできないでしょうか。
刊行年について。高野山に残る出版記録により、遅くとも鎌倉中期には『吽字義』が刊行されていることがわかっています。空海の主著だけにその後、相当版を重ねられたでしょう。刊記がない本書も、高野山もしくは同じく和歌山の根来寺あたりで刊行された一冊なのは間違いありません。