コレクション

麻疹絵「毒だてやうじやう」

収蔵品

江戸後期制作/サイズ:244×355mm(横×縦)

資料番号:44528

麻疹は、江戸時代において何度か流行した疫病で、幕末の大流行の際には、多くの死者を出しました。当時は、まだ麻疹に対する医療法や特効薬がなかったことから、江戸の庶民は、麻疹にかからぬよう、かかっても早く治るようにと神や呪物に頼っていました。そうした中、麻疹除けの護符としての役割を持った麻疹絵が盛んに用いられました。
麻疹絵は、護符としての役割を担った多色摺り木版画です。その種類もさまざまで、麻疹を退散させる意味を持たせるため、鎮西(ちんぜい)八郎(はちろう)為朝(ためとも)(源為朝)や鍾馗(しようき)などの英雄を描いたものをはじめ、麻疹除けのまじないに用いられた物、さらには、麻疹をもたらす神が退治されている様子や麻疹が完治した様子などを描いたものがあります。ここに紹介する麻疹絵には、麻疹除けに効力があるとされたタラヨウ(多羅葉)の葉が大きく描かれています。タラヨウの葉は、葉の裏に引っかいて文字を書くと、墨文字で書いたようになるもので、この葉に「むぎどの(麦殿)は生まれぬ先に麻疹して、かせての後はわが子なりけり」というまじないの歌を書いて川に流せば麻疹が軽くなると信じられていました(葉が無い場合は、絵に描かれた葉を切り抜いて流せば良いとされました)。また、ほかにも、麻疹除けに用いられた飼馬桶(麻疹にかからないうちにかぶせると難を逃れる、かかっても軽くすむと考えられていました)と房楊枝(ふさようじ)も描かれています。