コレクション

疱瘡絵「金太郎、春駒、うさぎ」

収蔵品

江戸後期制作/サイズ:209×336mm(横×縦)

資料番号:51420

疱瘡絵は、江戸時代において流行した疱瘡(天然痘)にかからないように、またかかった場合でも早く、軽く治るようにとの祈りを込め、門や家の中に張ったり、病人の枕元に置いたりして護符がわりに用いた木版画です。赤一色で摺られているのが特徴で、赤絵とも呼ばれています。これは、赤色が、古来より疫病や災難除けに効果があると信じられてきたからで、この赤色の力によって疱瘡を遠ざけようという願いが込められていました。
日本における疱瘡の歴史は古く、735(天平7)年には、多くの死者を出したことが『続日本紀』に記されています。疱瘡はその後も何度か流行を繰り返し、江戸時代には、毎年のように全国各地で発生しました。特に画期的な治療法もなく、その原因は超自然的な存在の力、すなわち疱瘡神と呼ばれる疫病(えきびょう)神が取り付くことによって発病するものと信じられていました。そこで利用されたのが、護符としての役割をもった疱瘡絵だったのです。
疱瘡絵は、赤色の力だけでなく、描かれている絵柄によっても効力を持たせました。疱瘡をもたらす神が恐れ、退散するようにと桃太郎や金太郎などの英雄や豪傑、全快するようにとの願いを込めて、縁起ものである鯛(めでたい)などが描かれました。今号で紹介している疱瘡絵には、その金太郎とともに、春駒(木作りの馬の首をかたどった子どもがまたがって遊ぶ玩具)とうさぎが描かれています。子どもが春駒で軽快にかけるイメージと、軽やかに跳ねるうさぎのイメージにより、疱瘡にかかっても軽くすむようにとの祈りが込められていたと考えられます。