コレクション

「すばらしい教えを説いた師の肖像」

収蔵品

1587年制作/サイズ:164×226×15mm(横×縦×厚み)

資料番号:53824

名文を残した偉人50名の肖像画集。中世の神学者聖トマス・アクィナスから、16世紀ガレと同時代に生きたクルシウス、マヌティウス、メルカトルの姿が所収されています。タイトルページ、献呈文に続き肖像者リストが掲載され、アクィナスから始まっていることがわかります(写真左ページ)。右ページをみると肖像の下部に紹介文が簡潔に表現されているのも確認できます。
16世紀、カトリック教会はキリスト教布教に尽力した人物を再評価し始めます。ヨーロッパの歴史にカトリックの教えがいかに大きな影響を与えてきたか、偉人が残した功績を通じて詳らかにしようとしました。本書が13世紀に『神学大全』を著した聖人トマス・アクィナスから始まるのもその顕れといえるでしょう。古代趣味が流行した16世紀には、古代ギリシア・ローマの彫像に影響を受けた肖像画や本書のような肖像画集がヨーロッパ各地で制作され、人気を博しました。
フィリップ・ガレはヨーロッパを代表する版画家一族出身で、16世紀最大の出版都市アントワープを舞台に活躍しました。ガレ一族は15世紀のブリューゲルから16世紀のルーベンスまでおよそ100年間、西洋版画を代表する画家たちの作品づくりを助けてきました。
写真は地球儀とコンパスを抱えるメルカトルの肖像。近代地図の制作者であるメルカトルはガレ同様アントワープの出身者です。本書は2006年にフランスルネッサンス研究の第一人者、二宮敬氏(元東京大学教授)のご遺族からご寄贈いただいたものです。