コレクション

『現代商業美術全集』全24巻

展示中

1928年(昭和3年)~1930年(昭和5年)制作/サイズ:190×265×12mm(横×縦×厚み)

資料番号:58229~58252

昭和3~5(1928~1930)年に刊行された全集で、今でいう商業デザインについて、ポスターやチラシ、パッケージなど毎号テーマを設けて紹介しています。国内外のふんだんな実例のみならず、その歴史や、意義、役割などについても解説されています。昭和初期は、1冊1円で毎月刊行される全集本、いわゆる「円本」が大流行しましたが、本全集も同様のスタイルをとっています。
この全集を出版したアルスは北原白秋の弟、北原鉄雄が大正4(1915)年に阿蘭陀書房の名で始めた会社で、大正6(1917)年に社名をアルスと改めました。編集を担うアトリヱ社は、もう一人の弟の北原義雄が大正13(1924)年に立ち上げた会社で、美術雑誌『アトリヱ』を発行しています。どちらも文芸、美術等の出版に力を入れていましたが、当時この企画は非常に画期的でした。
本全集附録の「商業美術月報」第一号で、美術評論家の仲田定之助は「商業美術と云ふ用語は未だ普遍的でない。おそらく一般の社会人にとって商業美術とは何だろうか殆どその概念さへも理解されないらしい。」と述べています。そんな時代において本全集の発行は「前人未踏の処女地を開拓する大事業」と賞讃されるものでした。