コレクション

『Oeuvers de Jean Midolle』

収蔵品

1834年~1835年制作/サイズ:288×410×33mm(横×縦×厚み)

資料番号:70764

フランス語で書かれた本書は、リトグラフによるカリグラフィの見本帖です。
古今東西の文字の模写や、当時の書体などが3つのテーマでそれぞれ40点ずつまとめられ、それらが1冊になっています。ただし、リトグラフとはいっても、多色刷りの色鮮やかなものではなく、この技術ならではの転写技術を利用したもので、一見するとモノクロの銅版によるカリグラフィ集といった趣があります。
発行者のエミール・シモンは、多色印刷をはじめ、ぼかし印刷や転写などの技術を合わせて使用する、高度な術を獲得した最初期のリトグラフの印刷者で、彼の仕事は、2,3年後に特許を取得する、ゴドフロア・アンジェルマン(ゴットフリート・エンゲルマン)によるクロモリトグラフィの商業性をいち早く予言するものでした。
デザインとカリグラフィを担当したのはジャン・ミドル。彼はストラスブールの文字デザイナーで、本書では想像力豊かに動物や植物、人、静物などをモチーフに象った装飾的なアルファベットのデザインが紹介されています。
彼の描いた悪魔や怪物を描いたイニシャルは有名で、2001年にデジタル化もされました。極悪非道のアルファベットとも呼ばれるこの文字は、フランスの7月革命後の政府に対する不満を風刺したものとも言われています。
扉ページにある砂目で印刷されたミドルの肖像画が、本書のなかで唯一リトグラフを感じるものになっています。