コレクション

伏見版『六韜』

収蔵品

1604年(慶長9年)頃制作/サイズ:198×282×11mm(横×縦×厚み)

資料番号:71688

本書は徳川家康が印刷させた中国古代の兵法書です。家康がつくらせた伏見版木活字が使用されています。家康は7種の伏見版を刊行しましたが、その中で『三略』と『六韜』は、1599(慶長4)年、1600(慶長5)年、1604(慶長9)年と、3度も重版されました。当館の所蔵品は、1604年の刊行かと思われます。
『六韜』は宋代に『武経七書』の一つに組み入れられ、中国古兵法の教科書として広く読まれてきました。「韜」とは、弓や剣を入れておく袋のことです。「文韜」「武韜」「龍韜」「虎韜」「豹韜」「犬韜」の6巻から成る『六韜』は、兵法の秘策集、宝庫と考えられます。
『六韜』では、周王朝を建国した武王とその父文王からの質問に対し、太公望呂尚が答えを返す問答形式で話が進んでいきます。具体的には、文韜・武韜は政治問題を、龍韜は作戦指揮を、虎韜は平野部での戦略を、豹韜は地形に応じた戦い方を、犬韜は兵士の教練などを説明しています。ちなみに「虎の巻」という言葉は、「虎韜」が出典だといわれています。
本書は関ヶ原の戦いがあった頃に重版されました。当時の緊迫した軍事情勢を彷彿とさせます。同時に戦だけではなく、平和時の体制づくりを見据えた家康の政治姿勢が感じられます。