コレクション

『なみまの錦』

収蔵品

1883年(明治16年)制作/サイズ:398×273×8mm(横×縦×厚み)

資料番号:01049

本書は明治16(1883)年12月に大蔵省印刷局が発行した魚図鑑です。印刷局は紙幣や証券の印刷を行う組織ですが、初期の日本の石版印刷においても優れた作品を残したことはよく知られています。『印刷局沿革録』によると、紙幣寮時代の明治7(1874)年10月、刷版局にドイツ人「プロモウ井チ」を6ヶ月雇い、「石版術ヲ開業ス」と記されています。石版部門開設の目的は、製品を作るのではなく、偽造防止研究のためでした。
しかし、明治9(1876)年2月から雇われた石版技師のアメリカ人、チャールズ・ポラードの指導を受け、高度な技術を習得した紙幣寮は、石版印刷による作品を次々と作り出しました。本書はそのひとつにあたります。
本書の緒言には、「古ヨリ魚譜ノ書多シト言ヘトモ図画密ナラサレハ日用ニ便ナラス故ニ詳ニ之ヲ記シ広ク画クコト能ハス…」と記され、「海魚ニ始メテ、河魚ニ及ホシ漸次発行シ…」とありますが、その後河魚についての書物は発行されなかったようです。本書発行時の印刷局長、得能良介はこの年の12月27日に逝去しており、それと何らかの関係があったのかもしれません。