コレクション

『朝陽閣鑒賞』

収蔵品

1882年(明治15年)頃制作/サイズ:194×273×11mm(横×縦×厚み)

資料番号:01899

朝陽閣とは印刷局の別称で、明治9(1876)年に建築された、鳳凰を冠にした印刷局の工場が朝陽閣と命名されたことからそう呼ばれていました。この本は、その印刷局から発行された書籍です。明治13~16(1880~1883)年頃にかけて、印刷局では当時最新の石版印刷を広め、あわせて古美術への関心を高めるために、さまざまな美術品を石版印刷で再現し、刊行しました。
当時印刷局長であった得能良介は、印刷局で指導を行っていたお雇い外国人キヨッソーネから国宝となるべき美術品が海外に流出していることを聞き、印刷技術の進歩に役立てるために国内の古美術を調査・記録することを思い立ちました。明治12(1879)年5月から五か月にわたり、近畿地方を中心に詳細に調査し、調査された美術品は、その翌年から3年かけて『国華餘芳(こっかよほう)』『朝陽閣鑒賞(ちょうようかくかんしょう)』『朝陽閣帖』『朝陽閣集古』としてまとめられました。
これら書籍は、大正10(1921)年に一般向けに販売されました。販売を行ったのは、印刷局の互助組織である朝陽会です。朝陽会では、印刷局から明治期に発行された高級印刷物を販売し、基本金に充てています。大正十年の官報には販売一覧が掲載されており「坊間の杜撰なる刷物とは全く其撰を異にすること多言を要せず」と書かれ、その自信がうかがえます。
『朝陽閣鑒賞』では、興福寺金襴など名物裂と呼ばれる古裂を紹介しています。どのページも十色前後の版が用いられ、広告文に違わず、まるで本物の裂が貼られているかのように繊維一本一本に至るまで細かく描かれ、印刷されています。