コレクション

『耶蘇降世伝』

収蔵品

1870年(明治3年)制作/サイズ:152×245×7mm(横×縦×厚み)

資料番号:01057

『耶蘇降世伝』は、1870年に上海の美華書館で印刷された書物。耶蘇はJesusの近代中国音訳語でイエス・キリストのことです。
美華書館といえば、日本が近代活版印刷を導入したアメリカ人のウィリアム・ガンブルが在籍していた印刷所です。当時の美華書館は、日本語の印刷物を受注していて、1863年のR.C.ブラウン著『日英会話篇』や、1867年のJ.C.ヘボンの『和英語林集成』が印刷されています。その後1869年の暮れにガンブルは美華書館を辞して来日しています。
この『耶蘇降世伝』は全60丁の袋とじの本ですが、その本文には異なる二種類の明朝体活字が使われています。これは美華書館が当時所有していた二号明朝活字で、一つはベルリンの鋳造業者アウグスト・バイエルハウスがサミュエル・ダイアの死後に、それを引き継いで作成したもの。もう一つはガンブルの指示により1868年暮れに新刻した二号活字です。これらの活字は前半40丁まではバイエルハウスが作った旧二号で組まれていて、41丁からは新刻二号が使われています。書物の途中から同じ明朝体なのに違う活字が使用されるのは珍しいことですが、その理由は不明です。