コレクション

『學問のすゝめ』

展示中

1871年(明治4年)制作/サイズ:115×177×2mm(横×縦×厚み)

資料番号:21115

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」これは明治という時代の精神を表し、今でも多くの人が知る有名な一節です。しかしこの言葉と書名の有名さに反比例し、この本の姿はあまり知られていません。実物は著者、福澤諭吉の主張の大きさに対し、そのイメージをくつがえす簡素なもので、出版形態も著者の自費出版によるものでした。知られていないことはまだあります。この書物を多くの人に知らしめたのは、著者が慶応義塾出版で刷らせた、活字を使用した本ではなく、版木に文章を彫る整版により印刷された海賊版でした。書名も本物は『學問のすゝめ』ですが、海賊版は『學問ノスゝメ』となっています。
こうして福澤の許可を得ずに作られた海賊版によって、民衆は自分と新しい社会との関係を考えたのです。その当時は今でいう著作権、出版権という権利は確立されておらず、この作者を無視した行為に対し、それ以前の著作の偽版にも立腹していた福澤は1872(明治5)年大阪府知事に取締要望書を提出しています。この一件から現在の著作権が生まれることとなり、『學問のすゝめ』は著作権問題でも、社会に一石を投じるものとなりました。