コレクション

『和訳英辞書』 English-Japanese Dictionary (薩摩辞書)

収蔵品

1869年(明治2年)制作/サイズ:249×190(横×縦×厚み)

資料番号:55342

わが国では、江戸時代に西洋諸国の情報を得る言語はオランダ語でした。ところが幕末にペリーが来日すると、オランダ語よりも英語を習得したほうがよいと当時の知識人たちは思うようになり、勝海舟や福沢諭吉のように実際に渡米する人物も現れました。
英語の辞書は、文久2(1862)年に堀達之助が刊行した『英和対訳袖珍辞書』が初版で、慶応2(1866)年には堀越亀之助が開成所から第2版となる『改正増補英和対訳袖珍辞書』を刊行。今回の『和訳英辞書』は、それら2冊の間違いなどを正して、明治2(1869)年に発行され第3版に相当する辞書です。通称「薩摩辞書」と呼ばれているこの辞書は、日本薩摩学生が刊行したと明記してありますが、実際は薩摩藩士高橋新吉、前田献吉、前田正名の3名が外国留学の資金を捻出するためにつくった英和辞書です。幕末から明治期に活躍した経済人五代友厚が、上海の美華書館に発注し印刷しました。上海の美華書館といえば、長崎の本木昌造が電胎法という母型製造方法を習ったアメリカ人ウィリアム・ガンブルが在席していて、この辞書の制作にもガンブルの協力があり、彼に対してのお礼の言葉が序文の中で述べられています。