コレクション

死絵「八代目 市川団十郎」

収蔵品

1854年(安政元年)制作/サイズ:260×390mm(横×縦)

資料番号:20002

人気俳優やタレントが亡くなると、テレビや新聞、雑誌などで大きく取り上げられ、その情報に私たちは目を奪われます。
これと似たような傾向が、まだテレビのなかった江戸時代にも見られました。それは、当時人気のあった歌舞伎役者などが亡くなった後、その似顔絵に、没時の年月日、法(戒)名、墓所、さらには辞世の句を添えた死絵という浮世絵版画が数多く発行され、江戸庶民が好んで買っていたことからうかがい知ることができます。
死絵が流行したのは江戸時代後期においてで、作品としては、人気浮世絵師を描いたものもありましたが、そのほとんどは歌舞伎役者を扱ったものでした。特に当時絶大な人気を誇った八代目市川団十郎の死絵は、ここに紹介するものを含め、実に百二十から百三十種類が描かれたと言われています。それは彼の美貌と実力が惜しまれたことはもちろんですが、それ以上に、彼が人気絶頂の中、32歳という若さで謎の自殺をとげたことが人々の興味を引いたからだと考えられます。
芸術作品としてとらえられがちな浮世絵版画ですが、江戸の人々にとって大切な情報メディアであったことを死絵は物語っています。