コレクション

Apocalipse cum figuris(ヨハネの黙示録)

収蔵品

1511年制作/サイズ:300×420×20mm(横×縦×厚み)

資料番号:20679

天使が重そうに抱えるのは、取り押さえた悪魔を底なしの淵に封印するための大きな鍵と鎖です。一方、山上にいる天使が指さす先には、神の栄光に輝くエルサレムがみえます。この新しい都をかたわらで眺めているのが記者ヨハネ。
一見、版画のようにみえますが、実は書物の挿絵です。迫力ある15枚の木版挿絵からは、テキストの補助的な役割に止まらないパワーを感じます。北方ルネサンスを代表する芸術家デューラーが、本場イタリアをしのぐ当代随一の版画家だったことが伺えるでしょう。挿絵製作は通常、原画、下絵、彫版、刷版、と細かく分けられますが、デューラー自身どこまで関わっていたかははっきりしていません。しかし、ここではデューラーの版画工房が本書も出版している点を挙げれば十分でしょう。というのも書物の出版そのものに版画工房が直接関わるのは、当時異例のことだったからです。出版者としての力量をも証明しています。
この『黙示録』は15世紀の終末思想ただようヨーロッパで出版されました(本書はラテン語第二版)。新約聖書の最終章を飾るこの幻視文学は、キリストの再来を求める当時の人々に熱狂的に迎えられました。