コレクション

挿絵入り聖書

収蔵品

1511年制作/サイズ:180×230×80mm(横×縦×厚み)

資料番号:53825

有名なトピックスに挿絵を入れたり、朱色でキャノンテーブル(対観表)や各書冒頭を強調するなど、見やすくするための工夫が随所にみられます。すべての人が聖書を入手できるわけではなかった当時、村の小さな教会や集会でこうした聖書が重宝されたのは想像に難くありません。一方で、裕福な聖職者、貴族、商人は、書斎を飾る「美本」として買い求めました。
書物が改良されていく様子がよくわかるラテン語聖書。二色刷りのタイトルページには、典型的なイタリア様式による聖ヒエロニムスの木版挿絵があり、その下の朱色のタイトルが目を引きます。肝心の出版社・刊期がみあたりませんが、ルカントニオ・ジュンタが1511年に刊行した本であることは、「ヨハネの黙示録」末尾にある奥付を読んで初めて確認できます。こうした情報は、近代になるとタイトルページに集約されますので、本書は前近代的な習慣を色濃く残した書物であるといえるでしょう。
一方で革製のインデックスが各書冒頭ページの小口についているのも面白いところです。肉厚な聖書もこうした工夫のおかげで使いやすくなっています。ルカントニオを含むジュンタ一族はイタリアばかりではなく、リヨン(フランス)にも拠点を置く、当時を代表する国際的な出版者でした。
本書は2006年、フランス・ルネッサンス研究の第一人者、二宮敬氏(元東京大学教授)のご遺族からご寄贈いただいたものです。