コレクション

Le terze rime di Dante『神曲』(ダンテの三韻句法)

収蔵品

1502年制作/サイズ:100×162×25mm(横×縦×厚み)

資料番号:20682

本書は16世紀最初に刊行されたダンテの『神曲』。印刷者はヴェネツィアのアルド・マヌーツィオです。アルドは前年から本格的に使用し始めたイタリック体活字によって本書を印刷しています。
アルド・マヌーツィオは、印刷出版史のなかでもっとも尊敬を集める人物の一人です。1490年過ぎにヴェネツィアで印刷所を開設し、学者並みの知識でギリシャ・ローマ古典を自ら校訂するなど、「学匠印刷家」としてルネサンスの文芸復興運動を支えました。
また、「手の平にのるサイズで携帯できる小冊子」を発行し、人気を博しました。15世紀に印刷されたダンテ『神曲』は15版ありますが、どれも二折判の大型本で詩文本文に加えて注釈などを伴っていました。しかし、本書では開発して間もないイタリック体活字を用いて詩文のみを印刷し、八折判として刊行したのです。このシリーズは大変好評を博したため瞬く間に各地で模倣されました。
この時期にアルドは、木版による商標を本の末尾や巻頭に印刷して自らの出版物である旨を強く発信していきます。モデルとして用いたのは、友人のピエトロ・ベンボから貰ったコイン。ローマ皇帝ティトゥスが発行した銀貨には「錨とイルカ」が刻まれていました。「ゆっくりと急げ」という意味を持つこの図を、アルド印刷所の出版であることを示す商標として用います。「錨とイルカ」の商標は、19世紀の出版社が自らの商標に採用する等、アルド・マヌーツィオの名声は後世にまで伝わりました。