コレクション

『百科全書』

展示中

1751年~1780年制作/サイズ:260×405×65mm(横×縦×厚み)

資料番号:20798~20832

本書は、1751年から約30年をかけてフランスでまとめ上げられた全35巻の大事典で、人類の「知」の集大成といわれた刊行物です。編纂はディドロと、ダランベールらが手がけており、その内容は人文学と産業技術史が中心となっています。『百科全書』はこれらに多くの銅版画による精緻な図版をつけて、専門的な技術をわかりやすく紹介しているのが特徴です。
百科全書は、宗教的権威に対抗して、正しい教育を通じて人間生活の進歩・発展を行おうとする啓蒙主義的精神をもとに編纂されました。それゆえ、人文学的な知識や産業技術が正確に、体系的にまとめられています。
ここで紹介する図版は、活字鋳造の道具「鋳型(モールド)」を図解したページです。このほか、活版印刷についてだけでも、父型・母型の製作、植字、組版、印刷という一通りの行程と、鋳型やステッキ、活字ケース、印刷機などが図版でとても細かく描写されています。18世紀のヨーロッパの印刷技術を知る上で、たいへんわかりやすく貴重な資料といえます。
百科全書は18世紀末のフランス革命に思想的な面で影響を与えたともいわれており、出版当時から厳しい検閲や弾圧を受けていました。執筆者の多くが途中で脱落する中、最後はディドロが独力で完成させました。今、私たちが昔の技術を知ることができるのは先人の努力と執念によるのです。