コレクション

ロバート・フック『ミクログラフィア』

収蔵品

1745年制作/サイズ:247×361mm(横×縦)

資料番号:29463

イギリスの科学者ロバート・フックが、顕微鏡を用いて観察した生物や植物の様子を描き、1665年に出版した書(本書は1745年に出版された再版本)。ノミやハエの精巧な姿や、植物の拡大図など、それまで肉眼では確認することが困難であった世界の姿に、みなが驚嘆しました。
表紙の画像は、コルクの断面を拡大した図です。図にAとBがありますが、これはコルクを水平、垂直に切断した違いによって得られる姿を描いています。Aでは細かく穴があいている一方、Bでは小さく区切られており、各穴は細長い管ではなく、閉じた小空間が多数あることがわかります。フックはこの小空間を「セル」と呼びました。コルクが軽量であることに加え、水を通さず浮かぶという特質は、「セル」が構成単位になっていることで説明できるとフックは考えました。また、「セル」という構成単位が多数集まって植物の姿を形作っているという考えは、19世紀になり動物にも適用され、生物を構成する基本単位「細胞」として理解されていきました。
拡大鏡は1600年頃、オランダの眼鏡職人によって発明されたといわれ、17世紀の西洋科学の世界は、レンズを通し新たな視覚世界に出合いました。象徴的な二人として、ガリレオ・ガリレイとロバート・フックが挙げられます。両者とも望遠鏡、顕微鏡を自作し、一方は遠く離れた空の彼方に、もう一方はミクロな世界に目を向けました。新たな世界を目の当たりにした科学者が、自らの観察結果を記録する際に、大いに役立ったのが、細かな線描が可能な、銅版印刷です。特にフックは、観測結果を自ら彫版したともいわれ、科学者でありながら印刷者でもありました。