コレクション

『狂えるオルランド』ジョン・バスカーヴィル印行

収蔵品

1773年制作/サイズ:150×235×35mm(横×縦×厚み)

資料番号:56288

本書を出版したジョン・バスカーヴィルは十八世紀イギリスを代表する印刷者・活字デザイナー・父型彫刻職人です。当時、活字デザインは変革の真っ只中にあり、ローマン体活字は、近代らしさを身にまとおうとしていました。従来のものをオールド・ローマン、来るべき書体をモダン・ローマンと呼びます。バスカーヴィルはその橋渡し役を担いました。
古代の石碑や手書き文字の雰囲気を残すオールド・ローマンに対し、モダン・ローマンは垂直水平が正確にとられ、それぞれの線の太さに極端な差をつけるのが特徴でした。バスカーヴィルは両者の性格を併せ持つ書体を作り出します。こうした改良に出版現場の近代化は欠かせません。細い線が再現できるインキを調合したり、印刷適正に優れた平滑な用紙を開発するなど、デザインや活字鋳造のみならず、トータルで印刷を変えようとしたのがバスカーヴィルだったのです。
一方で、皮肉なことにバスカーヴィルの書体はイギリスよりも先にアメリカやフランスで人気に火がつきました。本国で広く受け入れられるのはようやく二十世紀になってからのことです。タイトルは騎士道物語をベースに十六世紀初頭に誕生した空想物語で、イタリアの詩人ルドーヴィコ・アリオストの代表作です。