コレクション

渋沢栄一述『官版 立会略則』

収蔵品

1871年(明治4年)制作/サイズ:153×224×7mm(横×縦×厚み)

資料番号:70510

渋沢栄一が著した会社についての概説書です。「立会」とは会社設立を意味し、「通商会社」と「為替会社」の二本立てで構成されています。「通商会社」では商業の意義と合本組織の必要性、商社の権利や義務、株式会社の組織概要などを、「為替会社」では銀行の会社組織の特質、為替手形の取扱い、短期の貸付業務、預金業務などについて述べています。
1867(慶応3)年、当時幕臣だった栄一は、パリ万国博覧会に参列する徳川昭武に随行し、フランスに滞在しました。現地で銀行家のフロリ・ヘラルドより、金融制度や株式会社制度について学びました。本書で栄一は、会社組織が私権に属するものであることを強調し、また、近代的株式会社の原則を解説しています。商工業者には官の庇護からの自立を促し、会社には丼勘定的経営ではなく文書主義に基づく経営を推す姿勢が感じられます。
本書を発行した大蔵省は、印刷局を擁し、活版、銅版、石版など、最新の印刷技術で近代の印刷をリードしました。しかし、本書は伝統的な印刷技術である木版で印刷されています。明治政府は、明治一桁代(1870年代)において最も迅速な木版印刷を選び、株式会社設立の重要性をいち早く社会に伝えようとしたのではないでしょうか。