コレクション

『通宝商賣往来』

展示中

1818年(文政元年)制作/サイズ:177×254×4mm(横×縦×厚み)

資料番号:21372

『商売往来』は、商売に必要な教養、諸分野における296もの日常用語、商人として必要な日常的教訓を盛り込んだ往来物で、寺子屋をはじめとする庶民教育の教科書として広く使用されました。作者は、京都の手習い師匠である堀流水軒で、大坂の高屋平右衛門によって元禄7(1694)年に刊行されました。以後、版を重ね、本資料のように江戸時代後期から幕末にかけて200種以上が出版されました。
江戸時代において庶民の子どもたちは、寺子屋で師匠から手習いを中心とした「読み」、「書き」、「算」を学ぶことで、日常生活や社会生活を営むために必要な知識を得ていました。こうした手習いをはじめとする初等教育を学ぶ上で用いられたのが、多種多様の知識内容を盛り込んだお手本用としての教科書である往来物でした。往来物とは、往返一対の書状を集めて初歩的な教科書の形に編集したもので、最初は師匠から手渡される手書きのものが使用されていましたが、江戸時代後期に印刷・出版技術が発展したことによって、印刷された往来物が普及するようになりました。
また、この頃になると総合的な教科書を広く往来物と称するようになり、『商売往来』に代表される、商業や農業、工業といった実業に必要な知識を収録したものや、子どもに道徳を教えるための教訓書、ならびに日常生活における躾について述べたもの、自然科学に関する往来物など、その種類は、幕末に七千種、そのうち女子用だけでも千種類ほどあったといわれています。