コレクション

『北斎漫画』

収蔵品

1814年(文化11年)~1878年(明治11年)制作/サイズ:160×225×10mm(横×縦×厚み)

資料番号:65534~65548

葛飾北斎が手がけた絵手本です。全15編にわたって約3900余りともいわれる図像が描かれています。タイトルの「漫画」は、漫然と絵柄を無作為に抽出したといった意味で、まさに北斎が森羅万象の事物を心の行くままに描き、編集したように感じられます。『北斎漫画』は発売されると人気を博し、江戸のベストセラーかつロングセラーとなりました。海外からも高く評価され、「北斎スケッチ」と親しまれています。世界で最も有名な日本人の一人と言っても過言ではない、葛飾北斎が遺した代表的版本です。
晩年には自らを「画狂老人卍(まんじ)」と名のった葛飾北斎(宝暦10[1760]~嘉永2[1849])が、生涯に最も多くの業績を残した分野は、肉筆画や浮世絵版画ではなく、黄表紙、狂歌本、読本など多岐にわたる版本の挿絵でした。絵手本である『北斎漫画』は、絵画学習のための教習本です。しかし、図像百科事典とも言える啓蒙的な内容も含んでいます。だからこそ本書は、北斎の弟子や他分野の工芸職人たちだけでなく、一般の人々からも歓迎されたのでしょう。初編から15編(13~15編は北斎没後の刊行)まで、不定期に64年もかけて印刷、出版され続けたことがそれを物語っています。
現代の印刷の感覚で『北斎漫画』を眺めていると、筆者には、北斎はかなり「版」を意識して下絵を描いたのではないかと思えてなりません。見開きいっぱいの大きな絵柄、端から端まで配置された多数のイラスト。北斎は、製版・印刷・製本後に絵の迫力が失われないように、仕上がりイメージを計算していたように感じられます。思わず「印刷人・葛飾北斎」と呼びたいくらいです。