コレクション

『遠西観象図説』

収蔵品

1823年(文政6年)制作/サイズ:155×221×11mm(横×縦×厚み)

資料番号:26963

日本人の手によって著されたものとしては初期の体系的な西洋天文学書。オランダ通詞であった吉雄耕牛の孫で尾張藩の蘭学者・吉雄俊蔵が家塾観象塾で行った講義を、門人の一人である草野養準が編纂し、出版されました。オランダ語の自然科学書が複数定本となっており、馬児珍(マルチン)や馬盧蟄涅杜(マルチネット)の両説によっていることを題言にて記しています。
本書には太陽系の惑星の軌道や、望遠鏡で観測した月や土星などの姿など、多数の図が収められています。中でも解説に回転盤を利用した付録を設けている点は、本書の大きな特徴の一つといえるでしょう。緯度や季節によって日照の長さが異なる点や、太陽・地球・月の位置関係を自らの手で動かしながら、理解できる工夫がなされています。一方、当館所蔵本は、第10図に取り付けるべき円盤が、第8図に取り付けられているなど、誤った製本がなされています。同様の誤りが他館所蔵の刊本にもあることから、版元によっては内容を十分に理解せず、再版を行っていた可能性もあります。