コレクション

『庭訓往来』

展示中

1693年(元禄6年)制作/サイズ:185×273×25mm(横×縦×厚み)

資料番号:26996

学校教育に、コンピュータが導入されている現在においても、教科書は、教え、学ぶためには欠かせない教材です。
明治時代に近代教育が確立される以前、こどもの教育は、藩校や私塾、寺子屋などで行われていました。特に寺子屋は、江戸時代を代表する庶民の教育施設で、読み、書き、そろばんなどが教えられていました。この寺子屋での教育を支えたのが、往来ものをはじめとしたさまざまな教科書であり、その代表が『庭訓往来』です。
室町時代初期に作られた同書は、木版印刷技術の向上ならびに、出版文化の隆盛を見た江戸時代において数多く出版され、今日までに二百版近くのものが伝わっています。二五通の手紙文を十二ヶ月順に配列した、書簡形式の教科書で、衣食住や教養、文学など計九百六十四の語彙が収録されています。
徳川三百年という平和な世の中を背景として、庶民レベルにまで広がった教育は、識字率を高める原動力となりました。『庭訓往来』は、その一役を担った印刷物であったと言えましょう。