コレクション

『花押藪』

収蔵品

1690年(元禄3年)制作/サイズ:181×272×11mm(横×縦×厚み)

資料番号:74909~74915

水戸藩第2代藩主徳川光圀の命を受け、丸山可澄(まるやまよしずみ)が編纂した花押の図鑑です。花押とは自署(サイン)の代わりに書かれる略式の記号で、草書体が特殊な形状になったものです。本書は七巻七冊から成り、木版で印刷されました。歴史上の人物773人の花押が、天子・大臣・大納言・中納言・参議・二位三位・四位・五位・釈家・連歌師などに分類され、年代順に配列されています。本書の花押は、原本または写本より模写されました。
可澄は光圀に仕えて彰考館に入館し、書物の管理出納を司りました。佐々宗淳(さっさむねきよ)に伴い、九州・中国・北陸地方で史料採訪を行うなど、『大日本史』編纂事業を支え続けた人物でもあります。
花押が武士の間に広まると、本文は代筆者(右筆)が書き、本来の差出者は実名の下に花押だけを署名する様式が広まりました。武家社会において、花押は差出者本人の文書であることを証明するもの、また、あたかも人格を表すシンボルのように考えられました。
表紙の写真は、戦国時代の武将、武田信玄の花押です。正式な姓名である源晴信(みなもとのはるのぶ)(信玄は法名)の「晴」を、「日」「生」「月」に分解して、組み直したものといわれています。