コレクション

『東海道中膝栗毛』

収蔵品

1802年(享和2年)~1814年(文化11年)制作/サイズ:121×180×7mm(横×縦×厚み)

資料番号:27743~27760

江戸神田八丁堀の住人栃面屋弥次郎兵衛と旅役者の北八(喜多八)の二人による珍道中を描いた、十返舎一九による滑稽本の代表作です。江戸を出発した二人が、東海道を旅して、伊勢参りをした後に京都から大坂へたどりつきました。その道中において、小田原の宿で風呂桶の底を踏み抜いたり(本図はその場面を描いたもの)、蒲原で娘を口説いて失敗したりする様を、面白おかしく描いています。
『東海道中膝栗毛』は、道中における滑稽談や失敗談をつづった旅行記の形式をとっていますが、街道筋や市中の風俗もあわせて紹介されており、観光案内的な役割も担っていたといえそうです。当時の庶民の間には、全国各地の民俗や名所に対する関心が高まりつつあり、また封建制度に縛られていたことから、笑いを通しての開放感が求められていました。このような時代の要請を受けて、またそれに応える形で、十返舎一九は本書を書き上げ、広く庶民に受け入れられたのです。
本書の第八編末の広告には、「版木が減ったので、初編を再版」するという内容が記されており、改版や模倣版も多く出回りました。また、二人が金比羅宮や宮嶋、善光寺、草津温泉などの名所を旅する続編(『続膝栗毛』)25冊が、文化7(1810)年から文政5(1822)年にかけて刊行されています。これらのことからも、当時における人気の高さをうかがい知ることができます。