コレクション

『旅行用心集』

展示中

1810年(文化7年)制作/サイズ:124×180×16mm(横×縦×厚み)

資料番号:29385

江戸時代の人々は今の私たちに負けないくらい旅好きでした。それは、旅に関連した浮世絵や版本が数多く世に出されたことからもわかります。これらの出版物の中には、旅のハウツー本なるものもありました。今から200年程前の文化7(1810)年に出版された『旅行用心集』です。
作者の八隅蘆庵(やすみろあん)は、旅好きな人物。自らの経験と人から聞いた話をあわせて、旅の心得なるものをまとめて本書を著しました。タイトルに用心集と付けられている通り、道中において用心すべき点が六十一カ条にまとめられています。その内容ですが、「旅籠(はたご)に着いたら第一に東西南北の方角を確かめ、次に裏表の出入口を見定めておくべきである」、「宿では空腹のまま風呂に入らない方が良い」、「道中、神社や仏閣はもちろん、橋や立木、大きな石に落書きやお札をはったりしてはいけない」など、現代でも通用するものも見られます。他には、東海道・木曽路の里数や駄賃、日の出入、月の出入、諸国の温泉、西国・坂東三十三所・秩父三十四所のの観音霊場などの情報も網羅されています。
旅をするのに一苦労であった当時、旅情報満載の本書が、人々の心をとらえたことは想像に難くありません。