コレクション

『平天儀図解』

収蔵品

1802年(享和2年)制作/サイズ:181×258×10mm(横×縦×厚み)

資料番号:75495

望遠鏡制作者として名を馳せた岩橋善兵衛による天文学の入門書です。ガリレオが望遠鏡を用いた観測結果を、ヨーロッパで初めて出版したのは1610年。それとほぼ時を同じくして日本にも望遠鏡が伝わり、徳川家康に献上されています。
望遠鏡が渡来した後、20〜30年で主要な部品であるレンズ磨きが長崎にて行われていたようです。江戸時代の後半には、望遠鏡の製作は町人にまで達し、制作・販売を行う者も現れました。中でも本書を出版した岩崎善兵衛は、天文方の観測や伊能忠敬の測量にも採用されるほど性能の良い望遠鏡を制作していました。当時、レンズ磨きから望遠鏡の製造販売まで専業で行っていたのは岩橋家のみであり、家業は明治に入るまで続きました。
また、岩橋善兵衛は望遠鏡普及のため、天体望遠会を開催しています。参加者は肉眼では見ることが難しい月面の様子や木星の衛星、土星の環、天の川を驚きながら鑑賞したとされます。本書には観測結果を図版で紹介するなど、商品の魅力を伝えるパンフレットのような役割も果たしました。