コレクション

『安政見聞誌』

収蔵品

1856年(安政3年)制作/サイズ:171×248×9mm(横×縦×厚み)

資料番号:29307~29309

安政2(1855)年10月2日の夜、マグニチュード6.9と推定される激しい揺れが江戸およびその近郊を襲いました。この大地震によって、江戸だけでも7千~1万人の死者を出しました。地震発生の翌年に発行された『安政見聞誌』は、江戸各地の被害状況や風説をまとめたルポルタージュともいえるものです。
文章は、後に『安愚楽鍋(あぐらなべ)』などを刊行し名を馳せた戯作(げさく)者の仮名垣魯文(かながきろぶん)が担当。依頼を受けて3日で仕上げたと言われています。また、挿絵は人気絵師の歌川国芳らが描きました。全3冊より成り、多くの遊女が焼死した新吉原、崩壊した江戸城の石垣、九輪が打ち曲げられた浅草寺の五重塔などの被害状況が地区別に、挿絵を伴って紹介されています。両観音開きによる挿絵を多用したり、火災の状況を多色摺りで表したりすることで、臨場感を持って伝えようとしていることがわかります。
『安政見聞誌』は、「後世の人のために本書を記す」と前書きにあるとおり、地震の惨状と教訓を今日に伝える貴重な資料となっています。なお、本書は、無許可出版であったことから、出版後には幕府によって発禁処分を受けています。