コレクション

『国芳雑画集』

収蔵品

1856年(安政3年)制作/サイズ:120×182×13mm(横×縦×厚み)

資料番号:51430

幕末を代表する絵師の一人、歌川国芳による絵本です。1856(安政3)年に初編が、翌年二編が刊行されました。本書は初編で、タイトルどおり雑多な絵が登場します。すべての絵が木版印刷で多色摺りされていることは、版元が力を入れて印刷・出版したことをうかがわせます。
「武者絵の国芳」といわれるだけに、歴史に名を残す豪傑が出てくるページは特に目を引きます。紹介する見開き絵柄は、梵鐘(ぼんしょう)を持ち上げる武蔵坊弁慶です。弁慶には梵鐘にまつわる伝説がいくつかあり、代表的なのは三井寺から奪った鐘を比叡山に引き摺り上げ、撞(つ)いたところ、帰りたいと響いたので、怒って谷底に投げ捨てたという話です。鐘を引き上げる場面か、投げ捨てる場面なのかはわかりませんが、描かれたのは匡郭(きょうかく)をはみ出す程の巨大な鐘、それを持ち上げる筋骨隆隆な弁慶。小本サイズの本書から、まるで飛び出しそうな迫力です。
国芳は本書刊行の前年、1855(安政2)年に中風で倒れました。回復したものの、六年後の1861(文久元)年に65歳で没します。自らの晩年を意識して版下絵を制作したと思われるこの版本に、国芳作品の粋(すい)が簡約されていると感じます。