コレクション

『熱海温泉図彙(ずい)』

収蔵品

1832年(天保3年)制作/サイズ:150×218×5mm(横×縦×厚み)

資料番号:29320

熱海は、多くの人が訪れる温泉地ですが、庶民にまで広く人気を集めたのは、江戸時代になってからです。その熱海温泉の、江戸時代における人気ぶりを伝えるのが、『熱海温泉図彙』です。作者の山東京山は、戯作者として名をはせた山東京伝の弟。彼は、熱海温泉に訪れた時の見聞をもとに、本書を著しました。
日本橋からの行程に始まり、熱海の形勝、由来、効能、入浴方法、湯の味、七つの湯、熱海の神社・寺院、熱海での遊楽、二十一軒の旅店などについて記載しています。なかでも、効能については、多くの紙面を割いて、眼病や腰痛、痔、喘息、歯痛、腫物などに効果があることや、湯治に訪れた女性の不眠症が治った話などが述べられています。また、遊楽については、花見や潮干狩り、鮎釣り、紅葉狩り、雪見など、季節ごとの楽しみ方が紹介されています。「熱海全景畧図」や「熱海温泉湯源沸湧(ゆのもとわきだし)之図」、「浴室図」などの挿絵も掲載されていますが、これらは、浮世絵師の渓斎英泉(けいさいえいせん)、歌川国安のほか、山東京山の息子の京水も描いています。
熱海温泉を楽しむためのガイドブックとして、多くの人々を熱海へと誘う役割を担った一書といえるでしょう。