コレクション

『蘭語訳撰』

収蔵品

1810年(文化7年)制作/サイズ:177×262×10mm(横×縦×厚み)

資料番号:74207~74211

この書物は、5巻5冊からなる日本語オランダ語辞書です。中津藩第5代藩主の奥平昌高の命によって発刊されました。別名「中津版オランダ辞書」、「中津辞書」とも言われ、日蘭対訳辞書としては国内最初の刊本です。オランダ通詞の馬場佐十郎に草稿を作らせ、家臣の神谷弘孝に写させて本書を編纂させました。収録された語句は7千以上で、江戸時代に成立した日蘭対訳辞書としては充実した内容です。本文は古い節用集の形式に倣いイロハ順の19部門があり、各類は天文、地理、時令、数量、身体、神仏、飲食などの項目に分かれています。印刷方法が珍しく、匡郭と訳語は整版で印刷して、蘭語と部門名は木活字の2度刷りといった手の込んだもの。また製本もユニークで、包み背装で和綴じではなく糸の代わりに金属の鋲で3箇所を留め、表紙右端には細く削いだ幅5ミリほどの竹を通しています。
奥平昌高は、鹿児島藩主島津重豪の次男として江戸に生まれ、中津藩主奥平昌男の養子となり家督を継ぎました。学問を好んで国学、洋学に関心が高く、中でも蘭学には深く傾倒し、シーボルトが江戸に上る際は親しく教えを受けるなど、「蘭癖大名」の異名を取るほど熱心でした。