コレクション

『六臣註文選』

展示中

1625年(寛永2年)制作/サイズ:221×321×8mm(横×縦×厚み)

資料番号:29401

『文選』は、中国の梁代(502~557年)に編纂された、現存最古の一大詞華集です。周から梁に至るおよそ千年にわたる、百数人の詩と散文800余編が網羅されています。日本への伝来は古く、『日本書紀』をはじめとする国文学に多大な影響を及ぼしました。ここに紹介する『文選』は、上杉景勝の家老・直江兼続が開版させたものを、再版したものです。
直江兼続は、武勇に優れていただけでなく、政治にも手腕を発揮し、さらには学芸にも深い関心を示した人物でした。宋版の『史記』や『漢書』、『後漢書』をはじめとした古書の蒐集に力を入れたほか、元和8(1618)年には、米沢に禅林寺を建てさせ、禅林文庫を設けて、これら古書の整備も行っています。兼続の本好きは、古書蒐集にとどまりません。慶長12(1607)年には、上杉家の援助のもと、京都の要法寺に依頼して、『文選』60巻31冊を、木活字によって印刷、出版させました。彼の名をとって直江版、または会津版と呼ばれているものです。
ここに紹介する、当館所蔵の『文選』は、兼続の死後、この慶長12年の刊本をもとに、寛永2(1625)年に、上杉家において再版されたものです。同書は、やや大きめの木活字で印刷されており、また、本文中に罫線が無いなど、慶長12年の刊本との違いが見られます。