コレクション

丹録本『平家物語』

収蔵品

1656年(明暦2年)制作/サイズ:195×275×13mm(横×縦×厚み)

資料番号:36451~36462

江戸時代後期に至って高水準に達した木版摺りの技術は、錦絵(多色摺り浮世絵版画)を生み出したほか、書物の挿絵を多くの色で彩りました。こうして多色摺りによる挿絵本が数多く世に出たわけですが、それ以前はというと、墨摺りの挿絵に手で彩色を施した書物が江戸時代初期に刊行されていました。それがここに紹介する丹緑本です。
丹緑本とは、木版墨摺りの挿絵に丹(朱)・緑・黄・藍などの色を施したもので、丹と緑が特に多く用いられたことからこのように呼ばれています。絵の輪郭をきれいに塗りあげるのではなく、筆まかせに塗っているため、多色摺りによる挿絵と見比べると稚拙な印象を与えます。しかし、木版に簡単に彩色を施すこの技法は、初期の浮世絵版画へと受け継がれ、多色摺りの技術向上に貢献したといわれています。
江戸時代初期の出版の中心地が上方(京都およびその付近)であったことから、丹緑本も上方で刊行され、その作品としては、軍記物、お伽草子、古浄瑠璃が多くみられます。本書は、平家の興亡を記した軍記物『平家物語』の丹緑本です。